大きいサイズのお客様へ
「25.0cm以上の大きいサイズってどうして取り扱いが少ないのだろう?」
「あっても無難なデザインや地味な色ばかり…」
「私の周りでもモデルサイズの人が増えてきているのに、どうして?」
多くの大きいサイズ(モデルサイズ)の女性がこんな疑問を抱えていることと思います。
以前、当HPでは大きいサイズのお客様へ向けてのメッセージとして、
「モデルのジレンマ」というコンテンツを掲載させて頂いておりました。
それから少し年月も経ち、状況が変わってきたところもあり、逆に変わらない点も多々ありますが…
合わせまして、大きいサイズのお客様にお伝えしたい事を、改訂版として掲載させて頂きます。
どんな靴を作る…? デザインと木型
靴を製造するに当たって、まず一番に考えるのはファッションの傾向です。
ファッション傾向に沿ったデザイン・木型をデザイナーが1年位前から考えます。
靴というのは1足造り上げるのに非常に手間がかかるため、大抵半年~1年先を先取りしてデザインを企画します。
デッサンから始まり、そのデザインに合っていて次のシーズンに沿った木型を選定、または作成していきます。
木型は基本モデルを作成して、それを削ったり足したりしながら足入れ(履き心地)を修正していきます。
1つの木型を使って、いくつかのデザインの靴を作るのが通例です。
半年~1年先を先取りするのですから、デザイン選定は大変です。
評価の高いデザインから順に製造を決定していきますが、デザインが良くても試し履きをして履き心地が良くないもの、
製造をする際にクオリティを保ったまま量産するのは難しい…などというものは、結局は選からもれます。
次にカラーのバリエ―ションを考えていきます。
その時のファッション傾向で色調も大きく変わる時があり、
いくらデザインがよくても流行の色とズレていては皆さんに満足して頂けません。
メーカーも派手な色ばかりを扱っていては在庫が増える一方となり、
経営が立ち行かなくなってしまいます…特殊な色はなかなか製造することにリスクがあり難しいのです。
革は1足分の単位で入れさせてもらうことは難しいので、
少量と言っても限界があり、作るとなれば多少なりとも足数を作るリスクがあるからです。
また、革の色というのも難しく、元が自然のものなだけに個体差も出ますし、木型にはめて伸ばすと色の濃さや風合いが変わったり…
最終的に商品になった時のできあがりの想像もなかなか難しいものです。
サイズが絞られるワケ
デザインを決定したら、次は製造するサイズ構成を決めます。
合成皮革の場合、大抵は1セット50足単位で、それを何セットか製造しています。
ここでほとんどの靴が22cm~24.5cmまでしか製造しないことになってしまいます。
何故なら、今の婦人靴の市場で一番売れているのが23.5cmと24cmの2サイズで、
このサイズだけで市場の約50%を占めているのです。
更にその前後23.0cm~24.5cmを含めると、市場占有率が約85%に上ります。
靴屋はこのサイズをメインに取り扱っていれば少々の失敗でも損失が小さくて済むので、
22.5cm以下と25.0cm以上の大きいサイズが削られるようになってきたのです。
25.0cm~27.0cmのお客様の割合は、市場全体の10%弱と言われています。
木型を1足作るだけで、メーカーにとっては(諸々の経費合わせますと)数万~数十万の投資になります。
1サイズ1つ、それも1個しかなければ、1度に作れる靴の数は1足。
大抵は1~2晩くらいは木型に填めておきますので、2日で1足程度しか生産出来ないことになります。
とすると、1サイズにつき木型1つというのはあまり現実的ではありません。
つまり、1つの型を新しく作ろう、さらにサイズ展開を広げようと思うと、
それだけ木型の数が必要となり、コストがかかるわけです。
木型によっては数年通用するものもありますが、1年でボツになるものもあり、
婦人靴メーカーではつかい終わった木型が倉庫に山積みになっていたりするのです。
よって、あまり製造されないサイズの木型を大量に作ってしまうと、メーカーは赤字になってしまうのです。
またモデルサイズの靴は、通常サイズの靴と比べると使用する革も多くなりますし、
製造に必要な1つ1つのパーツのサイズも大きくなるため、原価が高くなります。
私共としてもそこが辛いところです。だからといって売価を上げるわけにはいかないですから…。
それでもメーカーに無理をお願いして発注し、仕入れの数量を保証することで製造してもらっています。
けれどほとんどのメーカーは通常の製造ラインから外れてしまうため、大きいサイズの製造を嫌がります。
嫌がるだけならまだしも、アッサリと断られてしまうことも少なくありません。
そして色物(ピンク・赤・青・緑・黄など)はレディースキッドでもそれほど多くは扱えません。
同一サイズ・同一デザインでもピンクなどは、一店舗で売れる数が非常に少ないのです。
そのために、黒・ベージュ・白など無難な色が多くなってしまうのです。
もちろんファッション傾向などで変化するのですが、売れる傾向が分かってからでは遅すぎます。
ですので出来る限り早くそのシーズンの傾向をキャッチして皆様のサイズを間に合わせるようにしていきたいと思っています。
色物はシーズン立ち上がりの早い段階で探すのが一つのコツです!
レディスキッドでは、ほとんどのデザインが各サイズ1足~2足ずつしか入荷してきません。
在庫数を抑えることで、出来るだけたくさんのデザインを扱うようにしているためです。
これは当店に限らず、多くの店舗が「現品限り」状態だと思っていただいていいと思います。
ですので、たとえレディスキッド以外のお店であったとしても、
貴女のサイズの気に入った靴がありましたら、その時は是非とも手に入れてください。
売れてしまうと補充が難しいからです。
靴は副材料(製造パーツ)が多いので、発注から入荷まで1ヶ月以上かかってしまうことも少なくありません。
また変わった素材や色、装飾の凝ったヒールなどを使っていると、材料が集まらずに製造が不可能になってしまうこともあるのです。
現在のところ、モデルサイズの市場は少しずつですが拡大の一途を辿っています。
全国の主要都市に各1店舗ずつ、モデルサイズを扱うお店がお目見えする日も夢ではないかもしれません。
レディスキッドではモデルサイズの皆様だけの専用フロアを設けております。
ご来店いただきましたお客様には種類の多さに感激していただくことが度々あります。
ただモデルサイズの靴は地方ではほとんど取り扱いがないようですので、
当店では2005年春よりインターネットを通じての通信販売を開始いたしました。
ですが毎年のように木型が変わる場合が多いので、その都度サイズ合わせをする方が、貴女の将来の健康のためです。
同じ木型を使っていたとしても、甲の深さなどの条件が変わると、足を入れたときの感じが違ってきたりするのです。
ですので、1年に1回でも結構ですので、池袋の店舗まで足をお運びいただければ幸いです